永年勤続で支払われる表彰金支払いの処理について

企業に長く務める従業員に対して企業からの労いと感謝の気持ちを伝える表彰金。要件によっては報酬、賞与とみなされないものがあるのをご存知でしょうか?
また、労働保険上対象外になるもの、所得税の取り扱いなど条件がさまざまあります。今回は永年勤続で支払われる表彰金を支払う場合の処理についてご説明します。

 

社会保険上の取り扱い

報酬及び賞与とは、「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されており、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するものであるとされております。
例としては、賃金、給料、俸給、賞与、インセンティブ、通勤手当、扶養手当、管理職手当、勤務地手当、資格手当、休業手当A等が該当します。
労働の対償として受けるもの以外は、「報酬・賞与」に該当しませんが、傷病手当金、休業補償、解雇予告手当、退職手当等がそれに該当します。
また、恩恵的に支払われるものも労働の対償とは認められないため、原則として「報酬・賞与」にはあたりません。見舞金、結婚祝い金等が該当します。


 

報酬・賞与とみなさないもの

永年勤続により支払われる表彰金は、以下の要件を満たした場合に報酬・賞与とはみなしません。
・表彰の目的企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
・表彰の基準勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
・支給の形態社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。
・以上の要件を満たさない場合でも直ちに報酬として判断せず、その性質について詳細に確認し、総合的に判断する。

 

労働保険上の取り扱い

次に労働保険上の取り扱いですが、賃金、手当、賞与、その他名称を問わず、労働の対償として会社が従業員に支払うすべてのものを賃金として扱います。ただし、永年勤続表彰金は「勤続褒賞金」と同義とされ、労働協約や就業規則に関わらずに、一般的には賃金とはみなされず、労働保険の対象外とされます。

 

所得税の取り扱い

所得税の取り扱いですが、永年にわたって勤務している人の表彰に当たって支給する記念品などは、次に掲げる要件をすべて満たしていれば、給与として課税しなくてもよいことになっています。
・その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。 
・勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。 
・同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。

なお、記念品の支給や旅行や観劇への招待費用の負担に代えて現金、商品券などを支給する場合には、その全額(商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。また、本人が自由に記念品を選択できる場合にも、その記念品の価額が給与として課税されます。

永年勤続による表彰金は、社会保険、労働保険、所得税それぞれに異なる取り扱いがありますので、正しく要件を確認し適正な処理が必要になります。