副業・兼業の労働時間管理の注意点
近年、副業を認める会社が増えてきており、労働者側も新たな収入源を得るだけでなく、スキルを磨いたり、自分の可能性を広げたりする絶好の機会として注目されています。しかし、副業を始める際には、事前に知っておくべき重要なポイントや注意すべき事項がいくつか存在します。
例えば、本業、副業ともに会社に雇用されている場合、労働基準法第38条「労働時間は、事業を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」という規定が適用されます。
重要なポイントや注意事項を知らないままだと、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。今回は、副業を認める前に押さえておくべき注意点について解説します。
本業+副業の労働時間は?
時間外労働の上限については、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)を限度とされています。労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合における労基法第38条第1項の規定の解釈・運用については、次のとおりとなります。
通算した労働時間が適用される規定
法律による上限:月100時間未満(時間外労働と休日労働の合計)
複数月(2~6か月)の平均80時間以内(時間外労働と休日労働の合計)
労働時間を通算した結果、1日8時間、週40時間を超えて労働させる場合には、発生した法定外労働時間について、労働基準法第37条に定める割増賃金を支払う必要があります。
労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者です。
一般的には、通算により法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者が、契約の締結に当たって、当該労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で契約を締結すべきことから、同法上の義務を負うこととなります。(※例外あり)
具体的には、既に本業先で8時間勤務をしている労働者と副業先が後から労働契約を雇用した場合において、2時間の時間外労働を命じた際は副業先が2時間分について残業代の支払義務を負います。
ただし例外として、本業先・副業先で4時間ずつ勤務することを予定している労働者に対し、本業先が1時間の時間外労働を命じ、副業先が2時間の時間外労働を命じた場合には、本業先が1時間分について、副業先が2時間分について残業代の支払義務を負うこととなります。
このように、必ずしも後から労働者と労働契約を交わした事業所が残業代を支払う訳ではなく、勤務状況を踏まえ、残業を命じることとなった事業主が残業代を負担するということになっています。
参考:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 Q&A
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000193040.pdf
通算した労働時間が適用されない規定
法律による上限(特別条項):時間外労働の上限 年720時間以内
上記の通り「月45時間、年360時間以内」、特別条項を設けた場合の「年720時間以内」という上限は、事業場単位にかかる規制であるため、本業・副業先の間で時間外労働を通算しません。
36協定で設定した上限時間の通算ルールは、それぞれの上限項目の対象範囲によって異なりますのでその点は注意が必要です。
さいごに
副業・兼業について、企業や働く方が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめたガイドラインがありますので、詳しくは下記URL(厚生労働省ホームページ)よりご確認ください。
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています