『過去最高の最低賃金引き上げ』 対策は万全でしょうか?

令和6年度地域別最低賃金額改定に対する答申が発表され、今年度は47都道府県で50円~59円の引き上げが行われる見込みで、昨年度の大幅な引き上げを上回る、過去最高の引き上げ額となります。
今後は、各都道府県の地方最低賃金審議会で目安を参考に実際の改定額を決定し、10月から新しい最低賃金が適用されます。
目安通りに引き上げられれば、最も水準が高い東京都は時給1,163円、最も低い水準の岩手県は943円となり、全国平均はついに1,000円の大台を超え、1,054円となります。

今回は、「過去最高の最低賃金引き上げ」について解説していきます。

 

最低賃金引き上げへの対応

時給制の従業員は、単に時給を最低賃金以上の金額に改定すればよいのですが、月給制の従業員の場合は、月給を時給に換算した上で最低賃金以上の金額であるかどうかを判断することとなりますので、少々複雑です。
ここでは、弊社クライアント様の多くが拠点を置かれている福岡佐賀長崎熊本の4県について、具体的な金額をもとに、月給制の従業員の最低賃金引き上げへの対応について解説いたします。


 

月給を時給に換算する方法

月給者の時給単価は、基準内賃金(残業代の計算の基となる賃金)を月平均の所定労働時間で除した金額となります。
例えば、【基本給20万円・資格手当2万円・週40時間勤務】の方であれば、基準内賃金は基本給と資格手当を合わせて22万円、月平均所定労働時間は173時間となりますので、下記の計算により時給単価は1,271円となります。

220,000円÷173時間=1,271円 (小数点以下切捨)

※基準内賃金には通勤手当や家族手当などの残業代の基礎とならない手当は含まれず、固定残業代制度を導入している場合、固定残業代として支給している手当は基準内賃金に含めることが出来ません。
なお、特例措置対象事業場であり、週の所定労働時間を44時間に設定されている場合であれば、同一の賃金を支払っている場合でも、時給単価が低くなることに注意が必要です。

具体的には、週44時間勤務であれば月平均所定労働時間は191時間となりますので、下記の計算により時給単価は1,151円となります。

220,000円÷191時間=1,151円 (小数点以下切捨)


 

各都道府県の金額設定について

福岡県
最低賃金は992円となる見込みですので、週40時間勤務の月給者の場合、基準内賃金を171,616円以上に設定する必要があります。
(週44時間勤務であれば、189,472円以上)

佐賀県
最低賃金は956円となる見込みですので、週40時間勤務の月給者の場合、基準内賃金を165,388円以上に設定する必要があります。
(週44時間勤務であれば、182,596円以上)

長崎県
最低賃金は953円となる見込みですので、週40時間勤務の月給者の場合、基準内賃金を164,869円以上に設定する必要があります。
(週44時間勤務であれば、182,023円以上)

熊本県
最低賃金は952円となる見込みですので、週40時間勤務の月給者の場合、基準内賃金を164,696円以上に設定する必要があります。
(週44時間勤務であれば、181,832円以上)

 
最低賃金以上の給与を支給することは使用者の義務であり、最低賃金を下回っている場合には、最低賃金法によって罰則が定められています
特に月給制の方については、知らずのうちに最低賃金を下回っていた、ということにならないよう十分にご注意ください。
※本記事の記載内容は、2024年8月現在の法令・情報等に基づいています。