年俸制と月給制の違いとは?

2024年7月末より開幕した「パリオリンピック・パラリンピック」では日本の選手が大いに活躍しています。スポーツ選手の報酬に関して、「年俸〇〇円」という言葉をよく耳にすると思います。社員に対して支払う報酬を年俸制にしている会社もあり、社員規模が大きいほど導入割合も高い傾向にあります。
今回は、会社における年俸制と月給制の違いについて解説していきます。

 

年俸制とは?

年俸制は、従業員の年間の給与総額を事前に決定し、それを月々やその他の支払日に分割して支給する給与体系です。年俸制は、従業員の業績や能力に応じて、年間の報酬を決定する仕組みであり、固定給与部分と変動給与部分が含まれることが多いです。

1.基本年俸: 年間の基本給与部分。月々に分割されて支給される報酬。
2.各種手当: 職務手当、役職手当、住宅手当などが含まれることがある。

年俸制を多く導入している職種としては、「経営層・管理職」「専門職(弁護士や医師など)」「研究開発職」などがあります。


 

月給制とは?

月給制は、従業員の月々の基本給与を事前に決定し、毎月一定額を支給する給与体系です。月給には基本給の他に、各種手当や残業代などが含まれることが多く、年に一度または二度の賞与(ボーナス)が支給される場合があります。

1.基本給: 月々の固定給与部分。
2.各種手当: 職務手当、役職手当、通勤手当、住宅手当など。
3.賞与(ボーナス): 業績や個人の成果に応じて年に1回または2回支給される追加報酬。
4.残業代: 法定労働時間を超えた労働に対して支給される追加報酬。

月給制を多く導入している職種としては、「一般企業の社員」「公務員」などがあります。

 

メリット・デメリット

では実際にそれぞれのメリット・デメリットを見ていきます。

メリット

<年俸制>
・収入の予測が容易(年間の給与総額が事前に決定されているため、収入の予測がしやすく、生活設計が立てやすい)
・固定支出の管理(企業側にとっても、固定支出としての給与を管理しやすい)
<月給制>
・労働時間に基づく報酬(労働時間に応じた残業代が支給されるため、働いた分だけ報酬が増える)
・賞与の支給(年に1回または2回の賞与があるため、特別な支出や貯蓄に充てやすい)

デメリット
<年俸制>
・変動要素の少なさ(基本年俸が固定されているため、業績が良くてもすぐには報酬に反映されないことがある)
・大きなプレッシャー(成果が直接報酬に紐づくため、常に高い業績を求められるプレッシャーが大きい。これにより、ストレスや過労の原因となることがある)
<月給制>
・収入の変動(賞与の額が業績に左右されるため、年間の収入に変動が生じやすく、不安定になることがある)
・評価の曖昧さ(賞与や昇給が評価に基づいて決定されるため、評価基準が不明確だと不公平感が生じる可能性がある)

以上のように、どちらが優れているということはありませんが、適用する職種によって判断をすることが望ましいです。

 

年俸制の場合、残業代は不要?

年俸制を導入しても、残業代の支払いが不要になるわけではありません。「労働基準法における管理監督者」や「高度専門職(高度プロフェッショナル制度対象職種)など」等の適用除外を除き、労働時間、休憩、休日、残業代に関する労働基準法の規定はすべての従業員に適用されます。そのため年俸制を採用している場合でも、従業員が法定労働時間を超えて働いた場合には、残業代を支払う義務があります。そのため運用にあたっては、次の点に注意が必要です。

残業代込み年俸 
年俸に一定の残業代を含める場合、その内容を労働契約や就業規則に明記し、従業員に説明することが求められます。
実労働時間の把握 
実際の労働時間を適切に管理し、年俸に含まれる時間を超過した場合には、追加の残業代を支払う必要があります。

年俸制を採用している場合でも、法定労働時間を超える労働に対する残業代の支払い義務は基本的に免除されません。年俸に残業代を含める場合は、その内容を明確にし、実際の労働時間を管理して、必要に応じて追加の残業代を支払わなければなりません。

 

最後に

年俸制を導入する場合、メリット・デメリットを十分に検討した上で、導入後の運用についても違反がないように注意する必要があります。
ご不明な点がありましたら、社労士法人かぜよみ各担当者へご相談ください。
※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。